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つむじが七つ、風のなか

普通の日記に混じり、同人的要素が含まれたものもごさいます。//二次元創作小説もございます。// 以上のことから、苦手な方、閲覧後にご自分で責任をとることが出来ない方はご退場くださいませ。// 完全に、つむじ奈々個人の趣味で作っているアレコレです。//版権元および原作者様とは一切関係ありません。// そのことをご理解の上、お楽しみください。
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落乱SS 未練

落乱SS 未練 (雑伊背景にありき、の尊→雑)

 今度、『葉桜』という新刊が出るんですが、それで没にした一部です。
これで書いちゃうと、惚れた腫れたになりそうで、書きたいものと違っちゃうなと思ったので。
個人的には、雰囲気だけ、まあまあ好きな部分です。

   未練

 

雑渡のことは、尊奈門が本当に小さかった頃から知っている。だからこそ、雑渡に対する想いは「好き」とか「嫌い」とかそんなものじゃない気がする。大きくなるにつれ、たくさんの人と知り合い言葉を交わした。上下関係を理解し忍びの仕事をするようになって、雑渡と主従になった。

 そして。

雑渡は外の世界にお気に入りを見つけた。尊奈門は、雑渡の一番のお気に入りから、二番目のお気に入りになったのだ。それだけのことだった。尊奈門がすうすうした隙間だらけの身体をもてあまそうとも、その事実は変わらなかった。尊奈門の身にどんな虚無感が降ってこようとも、ジリジリ焦げるような感情が湧こうとも、そんなものは無視されていることを受け容れるしかなかった。それでも。変わらずに雑渡に対する何がしかの気持ちが、確かに存在していたのだ。

 尊奈門は頭上を仰いだ。桜の枝越しに霞んだ空が見える。

桜の木はすっかり様変わりしていた。花はすっかりそぎ落とされ、無骨な枝にはしんなりとした若緑の芽が顔をのぞかせている。

 尊奈門は手を伸ばした。そっと触れてみる。濡れ布巾に触っているような、そんな瑞々しさを感じた。これは、生まれたての摂理だ。桜の花が散るのに、桜の葉が芽吹くのに理由はない。理由はいらない。ただ、自然の中で生きるものが自然の摂理に従った結果なのだ。だから、尊奈門のこの想いにだって理由はないはずだ。理由を考えてはいけない。ただ、この想いにひたすら向き合えばいいのだ。

 だから、だけど、でも。苦しくなってしまう。目を伏せたくなってしまう。あの人が一度も振り返らないから。一度も私を見ては下さらないから。

 隣で沈黙を守っていた高坂が口を開いた。

「尊奈門はさ、自分のお気に入りを取られてひがんでるだけだろ。てめえは三歳児かっての」

 呆れて言う高坂に、尊奈門はやんわりと訂正した。ずっとこの厄介な感情と向き合ってきたのだ。だから、もう正体を知っている。

「ひがみ……いいえ、違います。これは――」

高坂は何でも出来る人間だった。怒らせるととんでもなく怖いけれど、でも、嫌味なくらい何でも出来る。仕事で足を引っ張ったことなど一度もないと聞く。男気があるし顔も綺麗だから女の人にも困ったことがない。けれど、尊奈門が尊敬している高坂でも、この感情は知らなかっただろう。

 尊奈門は胸の辺りをぎゅっと握り、はっきりと言った。

「――これは未練です」

 自分の感情と向き合うのは怖い。けれど、尊奈門は自分にとって雑渡がどういう存在であったのか、ごまかしたくなかったのだ。

 

終わり


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